現場封印日記 season 9 vol.25

「頑張れ」 最大の応援の言葉の物語 part.3


物語の主人公・千は早くに父親を無くし(自分が記憶している限り)
一人暮らしをしていた。
彼氏は居るけれど、基本自分の素直な気持ちを表に出す事は無く
彼からのデートの断りやその他諸々の"願い"に対して
いつも決まって彼の要望を拒否する術を持ち合わせていなかった。
そんな事が原因で、彼も愛想を尽かす。


「好きな人が出来た。別れよう」


千はいつも通りに「うん。いいよ」とメールを送信する。
フラッシュバックする幸せそうな2人の姿を思い出しながら。


職場での出来事。
何をするにも無気力な千を心配して
同僚の若者が声をかける。
初めは励ますつもりで「頑張れ」と口にしたが
千にとってそれは元気になるどころか
反発的に成らざるを得ない言葉であった。
私の事を何も知らないで簡単にそんな事言わないで。
今考えてみると、この千の言葉は今まで溜めて来た彼女の鬱憤で
言いたかった本心であったとも思うし、
また初めて本音を解き放った瞬間でもあったのかなと感じます。


自宅に帰った千は部屋の整理をしていた。
(※確か引っ越しの準備をしていたのだと思う)
そこで見つけたのは父親が幼少時の彼女を撮ったビデオ。
懐かしさからか何気なく観たその映像に写っていたのは
父が懸命に頑張っている当時の自分に向かって
同じく必死に応援している姿だった。


「頑張れ!」


何度も何度も繰り返される単純で単調な言葉。
全身全霊を持って最愛の娘に対して放たれる唯一の愛情表現。
今は亡き父が残してくれた最大級の応援メッセージ。
ずっとひとりぼっちだった千に
いつも傍で見守っていると訴えかけるような
そんな父の残してくれた"たからもの"。


その言葉以上に気持ちが色濃く反映されていた。
そんな父の姿や言葉を見ている内に自然とこぼれる涙。
止める事なんて、もはや叶わない。
ただただ泣きじゃくるしかない。
感謝。


その瞬間から、千は気持ちを新たに歩み始めた。
自分の事を気にかけてくれる、心配してくれる人からの
「頑張れ」の言葉の意味を十二分に理解して。